医師も転職する時代です。そうした時代に医師が効率的な仕事を行うためのマナーをご案内していきます。２０１８年１０月版

就職先を一本に絞ってそこが駄目なら浪人を更に続けるというゆとりのある求職者はまずいません。

大抵は二つ三つ掛け持って天秤にかけます。

求人側としてはしかし、そこが一番知りたいところで、最初の面接で程々の印象を受ければ「あなたには是非来て貰いたいと思うが、他にも当っているところがありますか？」と尋ねるでしょう。

ことに、求人側がマンパワー不足をかこって火急に人が欲しいという場合は、ことさらその点が気になります。

掛け持っているということは、条件次第で他に走るリスクもあるわけで、そうなった暁にはまたイチから求人を始めなければならないので、ある程度覚悟を決めておかなければなりません。

だから、求職者としては正直に言ってもらいたいのです。

掛け持っていることを告げると、一本で絞り込んできている他の応募者に遅れを取る、求人側に悪い、失礼だ、と気遣う必要はありません。

二股かけていることをあえて自分から告白する必要はありませんが、問われれば素直に答えるべきです。その方が、求人側も正直に内情を披露するようになるし、始めはシビアな条件も、段々にこちらの思惑に近いものに譲歩してくる可能性もあります。

大体、段トツの好条件で迷わずそこに決められる、ということはまずあり得ません。帯に短かしタスキに長しで、甲病院の給料は乙、丙病院よりも勝っているが、ベッド数は一番少なく規模も小さい。つまり世間的に胸を張ってここに勤めてます、と言い切れないキライがあるとか、乙病院は給料はまあまあだが建物が締麗で見栄えもする、しかし肝心の手術室は狭く、暗いとか、丙病院は給料は最低だが病院の規模は大きい、スタッフも揃っている、反面、自分の持ち場にはヘッドがいて、なかなか自分の思い通りにはやれそうにない、等々、一長一短であれこれ迷うのが通例です。

その他、通勤距離や宿舎の有無なども秤にかける重要な条件となります。

「通うのにちょっと時間がかかるのが」と言葉を濁したら、この人間はまずその一事にひっかかって踏み切れないな、と求人側は考えてよいです。

宿舎を用意するから単身で来てくれと言われても、マイホーム主義の医者はそうおいそれと領けません。

こうした迷いは率直に打ち明けた方がよいです。それによって相手の誠意や、逆に打算も見えてきます。いい加減なところで妥協したり、不安を押し殺して見切り発車してしまうと、早々に挫折しかねません。

雇用者側には、新しい医師を迎える場合、それなりの準備があります。

まずは外来担当表の組み代えがあります。遅くとも１週前には玄関や外来にその旨掲示したい。と同時に、ロッカーや机、名札、印鑑等整えなければなりませんが、こちらの準備には２週間以上かかります。だから、余裕をもって１ヶ月前には確たる返事が欲しいのです。

就職するというならまだしも、今回は見合わすということであれば、雇用者側も次の医者を捜さなければなりませんので猶更です。

＜続く＞

（シニア医師）

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